大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)1217号・昭31年(う)1216号 判決

被告人 中財国雄 外七名

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第二点について。

論旨は、本件偽造ドル紙幣はいわゆるレッテル紙同然のものであるからこれを偽造と認定した原判決には理由不備の違法があると主張するものであるが、本件偽造ドル紙幣は真正な米国百ドル紙幣又は同五十ドル紙幣と殆ど見分け難いものとはいい得ないとしても相当精巧に作られており、真正なドル紙幣と極めて酷似していることは被告人中財国雄の検察官に対する供述調書中に同被告人の供述として述べられている野坂巡査の言動及び同人の紹介により現われた外国人某の言辞に徴しても明らかにこれを窺い得るところであり、又本件偽造ドル紙幣の鑑定の結果及び押収にかかる本件偽造百ドル紙幣及び五十ドル紙幣に徴しても、その紙質及びその作成方法が専ら写真技術によるもの等真券と比較対照すれば偽物なること明らかであるとしてもこれを単なるレッテル同然のものとは到底認め難いところであり、人をして一見真正な米国ドル紙幣と思わしめるに足る外観形態を備えていることは明らかなところであるからこれを偽造紙幣と認めるに難くないのである。したがつて原判決には所論のごとき理由不備の違法は存しないものといわなければならない。論旨は理由がない。

弁護人乙の控訴の趣意第一点の第一について。

論旨は、被告人津田喜信に対する原判決の判示第一及び第二の事実につき本件偽造ドル紙幣は日光の直射に曝せば短時間にして変色幻化或は影像の消失をも生じ、直射でない明るいところに放置すれば凡そ二、三日位で変色幻化するのがその本然の姿であるから法律にいわゆる偽造としての完成品とは認められないとして原審の事実誤認を主張するものであるが、本件偽造ドル紙幣は主として写真技術により作出されたものとはいえ、相当高度の技術を駆使して作成されたものであつて、前段弁護人和田孟の控訴の趣意第二点について判示したとおり、相当精巧に作られており、極めて真券に酷似し一見人をして真正な米国ドル紙幣と思わしめるに足る外観形態を備えているものと認むべきであるから、たとえ同被告人らの偽造した本件ドル紙幣につき、真券と比較対照し仔細に検討すれば所論のごとき種々の欠点を有するものとしてもこれを法律にいわゆる偽造紙幣というに何らの妨げもないものといわなければならない。なお、所論は本件は偽造ではなく、明治三十八年法律第六十六号第五条にいわゆる模造を以て論ずるを相当とする旨主張するけれども、同法条にいわゆる模造とは真券と同一の外観形態を有するものではないかこれと紛らわしい外観を有するものを指称するものであり、本件偽造ドル紙幣はその外観形態において全く同一物を作出したものであつて、ただその紙質及びその作出技術において劣るため、真券と比較対照し仔細に検討すれば真券とは明らかに相違するというに過ぎないものであるから到底所論のごとく模造に過ぎないものとはなし難いのである。論旨は理由がない。

(花輪 山本 下関)

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